被相続人が生前贈与や遺贈を行い、それらの持戻し免除の意思表示を自由に行えるとすれば、例えば、特定の相続人に全財産を贈与し、持戻し免除の意思表示を行えば、被相続人の一存で、他の共同相続人には一切相続財産を相続させないことができることになりそうです。
しかし、民法は、被相続人が有していた相続財産について、被相続人による自由な処分(贈与・遺贈)に制限を加え、相続財産のうち一定割合の承継を一定の法定相続人に保障するという遺留分制度を認めています(民法1028条)。
即ち、被相続人の意思に関わりなく、相続人には一定の遺留分が保障されていますから、特別受益(贈与・遺贈)の持戻し免除の意思表示によっても、遺留分を侵害することは許されないことになります。
そのため、相続人の遺留分を侵害する持戻し免除の意思表示は、遺留分権利者の遺留分減殺請求により、侵害の限度で無効になると考えられています。