遺産である不動産の無償使用については、土地の無償使用と建物の無償使用があると考えられますので、場合を分けて検討します。
① 相続人の一人が被相続人の生前に同意を得て、遺産である土地上に建物を建て、土地を無償で使用している場合
土地を無償で使用する権利は土地の使用借権と呼ばれ、土地を使用している相続人は被相続人の生前に、生計の資本としての贈与として、使用借権の設定を受けたことになります。
よって、土地の使用借権の生前贈与があったものとして、土地使用借権相当額について特別受益を受けた扱いとなります。
この場合には、さらに、土地の使用借権の生前贈与について、被相続人に持戻し免除の意思表示があるか否かを検討することになります。
② 相続人の一人が被相続人の生前に同意を得て、被相続人の建物に無償で居住していた場合
この場合、建物の賃料相当額が特別受益になるか否かが問題となりますが、建物の無償使用の場合には、被相続人に持戻し免除の意思表示があると認められる場合が多いでしょうから、原則として、賃料相当額は特別受益にならないと考えられます。