相続の放棄とは、相続財産(積極財産だけでなく、借金など消極財産も含む)の包括承継を全面的に拒否する意思表示であり、相続の放棄がなされると、その者は初めから相続人とならなかったものとみなされます(民939条)。
被相続人の借金が多く、相続財産では借金を返済できないような場合に相続放棄を選択することになります。
相続放棄では一切の財産を承継できないので、被相続人の預金等の積極財産を費消することは原則としてできません。被相続人の積極財産を処分すれば、法定単純承認(民法921条)として相続を承認したことになり、相続放棄ができなくなりますので、注意が必要です。
ただし、被相続人の相続財産から被相続人の必要かつ相当な葬儀費用を支出したという場合には、法定単純承認の「相続財産の処分」(民法921条①)には当たらず、相続放棄はできると考えられています(東京控判昭和11年9月21日、大阪高決平成14年7月3日)。
相続放棄をする相続人は、自己のために相続の開始したことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所において相続放棄の申述をしなければなりません(民938条)。
このように相続放棄の申述には期間制限がありますので、相続放棄を検討される方は、相続開始後に早急に弁護士にご相談されることをお勧めします。