相続の限定承認とは、相続人が、相続において取得した財産の限度においてだけ、被相続人の債務及び遺贈を弁済することを留保して、相続の承認をすることを言います(民法922条)。
すなわち、相続財産において積極財産(+の財産)と消極財産(-の財産、借金その他の債務)のいずれが多いのか分からないような場合に、限定承認の利用が考えられます。
積極財産が多い場合には、限定承認をした相続人は、積極財産から消極財産を差し引いた残余財産を承継することができます。
他方で、消極財産が多い場合には、限定承認をした相続人は、相続財産の限度で債務について責任を負い、相続財産の限度を超えて債務の弁済をする必要はないことになります。
相続の単純承認をすると、積極財産も消極財産も、限度なく包括的に承継することになりますが、限定承認によれば、消極財産(借金その他の債務)の方が多い場合は、相続財産の限度を超えて債務の弁済をする責任はないというメリットがあります。
もっとも、相続の限定承認は、手続きが複雑で、法律上も手続きが明確ではないためか、実務的にはあまり利用されていない制度となっています。