遺産を具体的に分割する方法には、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の4種類の方法があります。
遺産分割協議や調停による分割は基本的に当事者間の合意によるので、どのような方法による分割もできます。
遺産分割審判でも、当事者の希望がある程度一致している場合には、当事者が希望する分割方法が考慮されますが、当事者間に分割方法について争いがある場合には、まずは現物分割を検討し、それが相当でない場合は代償分割、代償分割もできない場合は換価分割を検討し、共有分割は最後の手段となります。
① 現物分割
現物分割とは、遺産をあるがままの姿で、個々の財産の形状や性質を変更させることなく分割する方法で、分割の原則的方法となります。
例えば、
「甲にはA土地を、乙にはB土地を、丙にはC土地を取得させる。」
「甲には土地を、乙には株式を、丙には現金を取得させる。」
などの分割方法を取ることになります。
② 代償分割
代償分割とは、一部の相続人に法定相続分を超える額の財産を取得させて、代わりにその相続人に、相続分に満たない遺産しか取得していない相続人に対する債務を負担させる(代償金を支払わせる)分割方法を言います。
代償分割は、一部を代償分割の対象として、現物分割と併せる方法によって、相続人間の調整が容易になり、その実益は大きいと言えます。
代償分割による遺産分割方法が取られるには、現物分割が不可能などの「特別の事由」が必要となり、また、債務を負担することになる相続人にその資力があることが要件となります。
③ 換価分割
換価分割とは、遺産を売却等で換金(換価処分)した後に、その対価を分配する方法を言います。
遺産を換価する方法は、任意売却や競売の方法によることになります。
④ 共有分割
共有分割とは、遺産の一部又は全部を具体的相続分による物権法上の共有取得とする方法を言います。
共有関係を解消する方法は、別途、共有物分割訴訟によることになります。
共有分割の方法は、現物分割、代償分割、換価分割が困難な状況にある場合などに限定されます。