被相続人が生前銀行に有していた銀行預金は、相続の際にはどのように取り扱われるのでしょうか。
銀行預金は、被相続人の財産ですので、相続財産に当然含まれます。
ただし、最高裁判所の判例(最判昭和29年4月8日、最判昭和30年5月31日)は、銀行預金は、相続の開始とともに当然に分割され、各相続人に法定相続分に応じて帰属すると判断しました。つまり、最高裁判所の判例によると、銀行預金は遺産分割協議をすることなく、各相続人が、銀行に対して、自分の法定相続分に相当する金銭の払戻しを請求することができます。
よって、例えば、A銀行に1000万円の預金をしていた亡き夫の相続で、妻及び子供2人が法定相続人の場合には、遺産分割の手続をしなくても、妻は法定相続分(2分の1)に相当する500万円、子供1人は法定相続分(4分の1)に相当する250万円を相続開始と同時に払戻請求することができます。
もっとも、実際には、多くの銀行は、相続人間のトラブルを避けるために、各相続人による単独での払戻しの請求には応じません。銀行は、遺産分割前であれば、相続人全員の同意書を要求し、相続人全員に払戻しをします。遺産分割後であれば、遺産分割協議書などの提出を求めることが多いでしょう。
遺産分割協議書の提出を求める銀行の対応に納得できない相続人は、銀行に対し、自分の法定相続分に応じた預金の払戻しを求める訴訟を提起することができます。上記の最高裁判所の判例に照らせば、一部の相続人が預金の払戻しを求める訴訟を提起した場合、遺産分割協議書等がなくても、銀行はこれに応じざるを得ない場合が多いと考えられます。
遺産分割調停では、相続人が銀行預金を分割の対象としないということをあえて求めない限り、通常は銀行預金も他の財産と同じように分割の対象とされるでしょう。
また、遺産分割審判手続では、相続人が銀行預金を遺産分割の対象に含める合意をすれば、銀行預金も分割の対象に含めて審理されることになります。